ニュースの概要
高知県大豊町で、高知農業高校林業総合科の生徒6人が、ドローンを使ったスマート林業の実践講習に参加した。テーマは「森林の見える化」。生徒たちは森林組合が所有する山林でドローンを飛ばし、樹木の本数、高さ、太さといったデータを集めた。指導にあたったのは建設コンサルタントの担当者で、生徒は取得したデータを自分たちで分析する。成果は2027年1月から2月にかけて、学校などで発表される予定だ。林業の現場ではドローンの普及がまだ十分とは言えない。一方で、測量や調査の省力化への期待は大きい。今回の取り組みは、将来の担い手となる若い世代が、機器の扱いからデータの読み解きまでを一続きで学ぶ機会になっている。
引用元: 高知農業高校の生徒がドローンを使った森林調査を実践(RKC NEWS NNN)
分析・見解
山を歩いて数える調査が、空からの計測に置き換わる
従来の森林調査は、人が山に入り、木を一本ずつ見て回る作業だった。胸の高さの直径を巻き尺で測り、樹高は専用の器具で測る。急斜面では一日に調べられる面積はごくわずかで、転倒や滑落の危険もつきまとう。ドローンはこの前提を変える。上空から撮った多数の写真を組み合わせて立体的な地図をつくれば、樹木の本数や高さをまとめて割り出せる。レーザーで地形を測る方式なら、葉が茂った場所でも地面の高さを捉えやすい。歩いて数える作業が、飛ばして解析する作業へ移りつつある。
技術より先に不足しているのは「データを読める人」
新聞やニュースでは機材の話が目立つが、本当の壁は別にある。ドローン自体は数十万円から手に入り、操縦も訓練すれば習得できる。しかし、得られた点群データ(=空間に散らばる無数の測定点)を、森林の資源量や間伐の計画に結びつけるには、林業の知識と情報処理の両方が要る。この二つを兼ねる人は少ない。今回の講習が興味深いのは、操縦だけで終わらず、生徒が分析まで担う点にある。農業分野では、ドローン散布の普及と同時に、操縦者の資格や運用ノウハウを持つ人材の取り合いが起きた。林業でも同じ流れが来るなら、早い段階で分析まで学んだ人は強みを持つだろう。
現場に広がらない理由は、費用よりも「使い道の見えにくさ」
普及が進まない背景として、機材の価格や飛行の手続きが挙げられがちだ。ただ、より大きいのは、計測した結果が日々の仕事の何に効くのかが、現場から見えにくいことだと考える。たとえば、境界の確認、伐採量の見積もり、搬出路の計画といった場面で、手作業より明確に早く正確だと実感できれば、導入は一気に進む。逆に、きれいな三次元図ができても、次の判断につながらなければ、機材は倉庫に眠る。測量業界が10年ほど前にドローンを取り入れたとき、定着したのは「土量計算が数日から数時間になる」という分かりやすい効果があった分野だった。林業も、効果が一目で分かる用途から入るのが近道になる。
高校の学びが地域の山の管理を支える可能性
日本の人工林は、戦後に植えられた木が伐採期を迎えている。一方で、所有者が分からない山や、境界があいまいな山も多い。こうした山を一つずつ人が歩いて確かめるには、時間も人も足りない。若い世代が空からの計測を身につければ、地域の森林組合にとって、調査の外注先であり同時に共同作業の相手にもなる。今回の発表会が学校内にとどまらず、地域に開かれた形になれば、山の現状を住民が知るきっかけにもなる。森林の価値は、見える形にして初めて話し合える。
ビジネスへの影響
森林組合と林業事業者は「小さく試して、効果を数字で残す」
まず取り組むべきは、全域の一斉導入ではない。管理する山の中から、境界が複雑な区画や、搬出路の計画が難しい区画を一つ選び、ドローン計測を試すのが現実的だ。そのとき、従来の方法にかかった日数と人数、ドローンで済んだ日数と人数を必ず記録しておく。数字が残れば、補助金の申請や理事会での説明に使える。外部の建設コンサルタントや測量会社に頼む場合も、解析の成果物の形式を最初に確認したい。自社の既存の図面や管理台帳に取り込めない形式で納品されると、せっかくの結果が活用できないからだ。
採用と育成では、学校との連携が新しい入り口になる
人手不足に悩む事業者にとって、今回のような高校の実習は、採用の入り口として見逃せない。実習の場として山を提供したり、技術者を講師として派遣したりすれば、生徒に仕事の中身を知ってもらえる。ドローンやデータ分析に関心のある若者は、従来の林業のイメージとは別の理由で興味を持つことが多い。募集の文言も「体力に自信のある方」だけでなく、「機械やデータを使って山を管理する仕事」と伝えると、届く層が変わる。育成の面でも、操縦と分析の両方を社内で担える人を一人育てることが、次の一手につながる。
機器メーカー・測量会社には、林業専用の使いやすさが求められる
機器や解析サービスを提供する側にとっては、林業向けに作り込まれた商品の余地が大きい。現場の担当者は情報処理の専門家ではない。飛ばして、結果を見て、そのまま伐採計画に使えるところまで一つの流れで提供できれば、導入のハードルは大きく下がる。教育機関向けの学習用パッケージも、将来の顧客を育てる意味で有効だ。