REPORT 05

国産材需要と木材価格の動向

かつて2割を切った日本の木材自給率は、約4割まで回復しました。ウッドショックを経て国産材の安定供給力への注目が高まり、非住宅建築の木造化や木材輸出という新しい需要も育っています。本ページでは、国産材の需要構造と木材価格の現況を、市場データの読み方とあわせて解説します。

木材自給率の回復――18.8%から約4割へ

日本の木材自給率(木材需要量に占める国産材供給の割合)は、2002年に過去最低の18.8%を記録しました。安価な外材に押され、国内の人工林が若く利用に適さなかった時代です。その後、人工林の成熟、合板メーカーによる国産材シフト、木質バイオマス発電の燃料需要、大型製材工場の整備などが重なり、自給率は一貫して回復基調をたどり、近年は約4割の水準で推移しています。

政府の森林・林業基本計画は2030年の木材自給率50%程度を見据えた供給量拡大を掲げており、国産材の増産はスマート林業・林業DXへの投資を正当化する需要側の根拠となっています。ただし、自給率の回復は「国産材の供給力が伸びた」ことに加え「木材需要全体(特に紙・パルプ)が縮小した」ことの影響も含む点には注意が必要です。

木材自給率の推移(概況)

1955年頃
9割超
2002年
18.8%
2015年頃
約33%
近年
約4割

林野庁「木材需給表」をもとにした概況。2030年に向けて50%程度への引き上げが政策目標とされています。

ウッドショックの経緯と現在の価格水準

2021年に発生したウッドショックは、木材市場の構造を世に知らしめた出来事でした。コロナ禍からの米国住宅市場の急回復と海上輸送の混乱で輸入材(米マツ製材、欧州産集成材等)の供給が逼迫し、価格が急騰。代替需要が国産材に殺到し、スギ正角やヒノキ製材の価格は一時、平時の2倍前後まで上昇しました。

その後、2022年後半から世界的な需要減速とともに価格は調整し、現在はピーク時から大きく下げたものの、ウッドショック前よりやや高い水準で落ち着いています。重要なのは価格そのものよりも、この経験を通じて住宅メーカー・プレカット業界に「輸入材依存のリスク」と「国産材の安定調達」という発想が定着したことです。製材工場と山側が数年単位の協定取引(直送・数量契約)を結ぶ動きが広がり、丸太の安定供給力、すなわち素材生産の計画性と情報化が調達競争力に直結する時代になりました。

一方で、山元立木価格への波及は限定的でした。丸太価格が上がっても、伐出コストと流通マージンを差し引いた山元の取り分は小さく、「川上に利益が届かない」構造課題が改めて浮き彫りになっています。この流通構造の改善こそ、ICTによる直送化・需給マッチングが期待される理由です。

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国産材の需要先――住宅・非住宅・合板・バイオマス・輸出

国産材(丸太)の需要は、大きく5つの出口に整理できます。最大の出口は製材用で、その大半が住宅の柱・土台・梁などの構造材です。ただし新設住宅着工戸数は人口減少により長期的な減少が避けられず、住宅一本足からの脱却が業界共通の課題です。

成長分野として期待されるのが非住宅・中大規模建築の木造化です。2010年の公共建築物等木材利用促進法(2021年に「都市(まち)の木造化推進法」へ改正)以降、庁舎・学校から民間のオフィス・商業施設まで木造・木質化が広がり、CLT(直交集成板)や木質耐火部材といった新建材の実装が進みます。2025年大阪・関西万博の大屋根リングは、国産材を大量活用した中大規模木造の象徴的な事例となりました。

このほか、(1)国産材シフトを完了した合板用、(2)FIT制度以降拡大し年間需要の1割超を占めるまでになった燃料材(木質バイオマス発電・チップ・ペレット)、(3)丸太・製材を中国・韓国・台湾・米国などへ輸出する木材輸出(近年は年間数百億円規模)が主要な出口です。輸出は現状、低価格の丸太輸出が中心であり、製材・加工品として付加価値を高めて輸出する体制づくりが課題とされています。

国産材の主な需要先と動向(当サイト整理)

需要先現況今後の見通し
住宅(製材用)最大の出口。プレカット経由が主流着工減で縮小傾向、シェア争いは継続
非住宅・中大規模木造CLT・耐火部材で実装拡大成長分野。都市の木造化が追い風
合板用国産材シフト完了、針葉樹合板が定着安定。住宅市況の影響を受ける
燃料材(バイオマス)FIT以降拡大、未利用材の受け皿FIT後の燃料調達構造が焦点
輸出中国・韓国・米国等へ数百億円規模丸太中心から製品輸出への転換が課題

各需要先の規模・動向は林野庁「森林・林業白書」等の公表情報に基づく概況です。

製材・流通の構造変化――大型工場への集約

川中の製材業では、大規模化・集約化が進行しています。年間原木消費量が10万m3を超える大型製材工場が各地に立地し、山側からの直送・協定取引、人工乾燥・JAS認証材の安定供給、バイオマス発電併設によるエネルギー自給といった統合型のビジネスモデルを展開しています。中小製材所の廃業が続く一方で、大型工場の存在は周辺地域の素材生産量を押し上げる効果を持ち、「大型工場の立地=地域林業の産業化」という構図が定着しつつあります。

流通面では、原木市場を経由する伝統的な流通に加え、山土場から工場への直送方式が拡大しています。直送を成立させるには、丸太の径級・品質・量を事前に正確に把握し、工場の需要と結び付ける情報基盤が不可欠であり、ここでも林業DXで解説したICT生産管理・AI検収・需給マッチングが効いてきます。国産材市場の拡大は、単なる資源量の問題ではなく、情報化された供給網をどれだけ構築できるかにかかっていると言えます。