ニュースの概要
静岡県は、令和8年度の森林・林業先端技術セミナー『Innovation PowerWeek』を開催中だと、公式ホームページで案内している。名称からは、1回きりの講演会ではなく、一定の期間にわたって先端技術を紹介する企画であることがうかがえる。林業は、担い手の減少と高齢化、急斜面での危険な作業、伐採後の再造林の遅れといった課題を抱えている。そこにドローンや航空レーザ測量、遠隔操作の機械などをどう根付かせるかは、各地に共通するテーマである。今回の取り組みは、県が技術の「紹介」から「現場での定着」へ踏み込もうとする動きとして読める。ただし、公開されている情報だけでは個々の講座内容までは確認できない。そのため以下では、全国の状況と照らしながら、この催しの意味を考えたい。
引用元: 令和8年度森林・林業先端技術セミナー『Innovation PowerWeek』を開催中です。(静岡県公式ホームページ)
分析・見解
週をまたぐ開催が示す、見学会で終わらせない狙い
従来の技術セミナーは、半日の講演と機器の展示で終わることが多かった。参加者は「面白かった」と帰り、現場の作業は何も変わらない。そうした例は林業に限らない。名称から読み取れる範囲では、今回は期間を区切って複数の技術を続けて見せる形式のようだ。
立場が違えば、知りたいことも違う。林業事業体は機械の稼働率を気にし、市町村は森林管理の手間をどう減らすかを考え、測量会社は新しい受注先を探している。こうした人々を同じ場に集めること自体に価値がある。
急な山が多い静岡は、新技術の効果が出やすい土地
静岡県は、県土の約3分の2を森林が占める。天竜のスギやヒノキのように、良質な木材で知られる産地もある。一方で急な斜面が多く、木を山から運び出す作業は、今も人手と経験に頼る部分が大きい。
つまり、省力化の効果が大きい土地である。ただし、斜面が急なほど機械は入りにくい。平地向けの機械をそのまま持ち込んでも使えない。地形に合う技術を選び、実際に試せる場があること。そこが県主催の催しの強みになる。
勝負を分けるのは、機械よりデータがつながるか
航空レーザ測量(=飛行機やドローンからレーザを当てて、地形や木の高さを測る方法)を使えば、立木の本数や体積をかなり正確につかめる。そのデータを伐採計画や運搬路の設計、木材の販売先との調整に使えれば、効果は大きい。
ただし、個々の技術が優れていても、ソフトごとにデータの形式が違えば、現場の手間はむしろ増える。農業でも、ドローンは買ったが撮った画像を使いこなせない、という例は多い。セミナーでは、技術そのものより、データの受け渡しや運用費用まで比べられるかが重要になる。
担い手の減少に、技術の見せ方で向き合う
林業で働く人は、2020年の国勢調査で約4万4千人。1980年ごろの14万人台から大きく減った。省人化は避けられない流れである。
技術には、人手を補うだけでなく、仕事の印象を変える力もある。遠隔操作やデジタル測量は、危険で厳しいという印象をやわらげる材料になる。ただし、機械が増えても、段取りを組み、データを読み、故障に対応する人は必要だ。技術を入れるほど、求められる技能の中身が変わる。そこまで見据えた研修につながるかが、本当の成果を左右する。
ビジネスへの影響
参加前に、自社の課題を一つに絞っておく
先端技術の催しでは、展示が多すぎて何も持ち帰れないことがよくある。事前に「再造林のコストを下げたい」「測量にかかる日数を減らしたい」など、課題を一つ決めておくと、聞くべき質問がはっきりする。できれば現場の担当者を同行させたい。経営者だけが見ても、機械の使い勝手は分からない。
質問は三つに絞るとよい。導入費用の総額、年間で何日使えるか、故障したときの連絡先である。この三点を各社に同じ形でたずね、一覧にして比べると、判断が速くなる。
導入の可否は、補助金より年間の稼働日数で決める
補助制度があると、つい購入ありきで考えやすい。しかし、補助が出ても、残りの負担と維持費は自社持ちである。年間の稼働日数が少ないなら、レンタルや共同利用、作業の委託のほうが安く済むことも多い。近隣の事業体と共同で使う仕組みを作れないか、会場で知り合った相手と話してみる価値がある。
林業以外の企業にも、接点は意外に多い
測量、ソフト開発、通信、建設、木材を使う製造業。いずれも林業の現場とつながる。山では携帯電話の電波が届かない場所が多く、通信や電源の技術には需要がある。木材の産地や量を示すデータは、建材や家具のメーカーにとって、調達の説明材料にもなる。名刺を交換するだけで終わらせず、小さな実証試験を一緒に行う提案まで持っていくと、次の仕事につながる。