ニュースの概要
自治体通信Onlineが、森林環境譲与税を活用した自治体の取り組みを紹介している。内容は大きく四つに分かれる。一つ目は、森林経営管理制度を使い、所有者が手入れできない森を市町村が仲介して整備する動き。二つ目は、森林が吸収するCO2の量に応じて支援額を決める仕組み。三つ目は、すでに庁内で使っている地図システム(WebGIS)に、林地台帳の機能を足して運用する工夫。四つ目は、ドローンや計測機器を使ったスマート林業の推進である。譲与税は使い道の自由度が高いぶん、自治体ごとの考え方の違いが施策に表れやすい。今回の事例は、その違いを具体的に見せてくれる材料になっている。
引用元: 森林環境譲与税の取り組み 自治体事例|森林経営管理制度を活用した森林整備の促進、CO2吸収量に応じた支援、既存の庁内WebGISへの林地台帳機能の追加、スマート林業の推進(自治体通信Online)
分析・見解
配分は決まっていても、使い方は自治体任せ
森林環境譲与税は、森林面積や人口などを基準に、国から市町村へ配られる。森林がほとんどない都市部にも届く点が特徴だ。ところが使い道は幅広く、人材確保、木材利用の普及、森林整備と多岐にわたる。
そのため、同じ金額でも成果に大きな差が出る。基金に積んだまま動かない自治体もあれば、森林経営管理制度の意向調査に着手し、整備を始めている自治体もある。今回の事例は、後者の動きを具体的に示している。
経営管理制度は、所有者の迷いを先に解く仕組み
森林経営管理制度は、手入れされていない私有林を、市町村が窓口となって整える仕組みである。所有者の意向を聞き、意欲ある林業事業者へつなぐ。条件が合わない森は、市町村が自ら管理する道も開かれている。
現場でつまずきやすいのは、所有者の特定と境界の確認だ。相続が重なって持ち主が分からない山は珍しくない。制度を回すには、誰の山でどこまでが境界かを、先にはっきりさせる必要がある。ここに予算と人手が最初に吸い込まれる。
既存の地図システムに林地台帳を足した理由
今回の事例で興味深いのは、新しい専用システムを買わず、庁内でもう使っているWebGIS(=地図上に情報を重ねて見るシステム)へ林地台帳の機能を足した点である。林地台帳は、森林の所有者や面積を記録する帳簿だ。
専用システムを入れると、導入費だけでなく、職員の操作研修や他部署の地図との連携が別の仕事になる。道路、上下水道、防災などの地図と同じ画面で森林を見られれば、土砂災害の危険箇所と放置林を重ねて見るなど、部署をまたぐ判断がしやすくなる。小さな自治体ほど、この現実的な選び方が効く。
CO2吸収量とスマート林業が測るものの違い
CO2吸収量に応じた支援は、手入れの成果を数字で示せる利点がある。一方で、吸収量は樹種や樹齢で大きく変わる。若い人工林は吸収が盛んで、老齢林は伸びが鈍る。数字だけで支援先を決めると、手入れの遅れた森が後回しになる恐れもある。
スマート林業は、ドローンなどで森の状態を測り、作業を効率化する取り組みだ。ここで重要なのは、測った結果を台帳やWebGISへ戻す流れを作れるかどうかである。計測だけで終われば、データは倉庫に眠る。自治体の地図が受け皿になれば、支援額の根拠にも整備計画にも使える。この循環こそが、今回の事例群に共通する要点だと考える。
ビジネスへの影響
自治体の地図データが、新しい営業の入り口になる
林業事業者や測量会社にとって、自治体が持つ林地台帳とWebGISは、案件の入り口になる。どの山が未整備で、所有者の意向がどうなっているかが整理されれば、事業者は提案の優先順位をつけやすい。
まず、対象の市町村が意向調査をどこまで進めているかを確認したい。その進み具合に合わせて、境界確認、間伐、ドローン測量などの提案を切り分けられる。
吸収量の数字を、取引の言葉に直して使う
CO2吸収量に応じた支援が広がれば、成果を数字で示せる事業者が有利になる。施業の前後で森がどう変わったかを、写真と計測値でそろえて残す習慣が武器になる。
これは民間のカーボンクレジット(=CO2削減量を売買できる形にしたもの)の説明資料にもそのまま転用できる。自治体向けと民間向けで別々に資料を作る手間が減る。
小さく始めて、既存の仕組みに合わせる
導入を考える企業は、新しいシステムを丸ごと売り込むより、自治体が使っている地図に載るデータ形式で納品する方が通りやすい。今回の事例が示すように、自治体側も既存の仕組みを活かしたい。
最初は一つの地区で試し、成果と費用を数字で示すのが現実的だ。そのうえで、他の地区や近隣の市町村へ横展開する道筋を描くとよい。