ニュースの概要
農業支援アプリ「アグリノート」が持つ衛星データと、XAG社の農業用ドローンが連携し、可変施肥が実現したとドローンジャーナルが伝えた。衛星で撮影した畑の生育状況から、場所ごとの肥料の必要量を割り出す。その施肥マップをドローンに読み込ませ、畑全体に均一ではなく、生育が弱い所に多く、旺盛な所に少なくまく仕組みである。これまで多くの農家は、畑全体に同じ量の肥料をまいてきた。今回の連携により、衛星画像の確認から施肥作業までの流れが一つにつながる。データ取得と散布機材が別々だった現場の手間を減らす動きとして位置づけられる。
引用元: アグリノートの衛星データとXAGドローンが連携、可変施肥を実現(ドローンジャーナル)
分析・見解
衛星の目とドローンの手がつながった意味
可変施肥とは、畑の場所ごとに肥料の量を変えるやり方である。考え方自体は新しくない。大型農場では、トラクターに載せた機械で二十年以上前から試されてきた。
ただ、実際に広まったとは言いがたい。理由は、生育を測るデータと、肥料をまく機械の間に「橋」がなかったからである。衛星画像を見て、人が地図を描き、機械用の形式に直して入力する。この手間が導入の壁になっていた。今回の連携は、この橋をつなぐ試みである。
衛星データにできることと、できないこと
衛星は広い範囲を安く、定期的に撮れる。作物の緑の濃さから生育の良し悪しを読み取る手法は、すでに実用段階にある。数十ヘクタールを抱える生産者ほど、効果は大きくなる。
一方で弱点もある。雲があれば撮れない。梅雨の時期は、使える画像が月に数枚になることもある。解像度も、数メートル単位が一般的で、畝ごとの違いまでは見えない。
ここで、ドローンが自前のカメラで補う余地が生まれる。広域は衛星、細部はドローンという分担である。この二段構えを一つの流れにできるかが、本当の勝負どころだろう。
日本の小さな畑では何が起きるか
日本の農地は平均で数ヘクタールほどと小さく、形も不規則である。衛星の画素が荒いと、一枚の畑が数画素しか占めない。これでは、場所ごとの差を細かく読み取りにくい。
そのため、可変施肥の効果が出やすいのは、まとまった面積の水田や麦、大豆などだろう。果樹や野菜の小規模圃場では、まず土壌診断の結果と組み合わせる工夫が要る。
肥料価格が高止まりしている点も見逃せない。必要な所にだけ多くまく仕組みは、一割の削減でも年間の収支に響く。節約と収量の安定を同時に狙えることが、普及を後押しする。
林業や広域管理への応用という見方
私たちが扱う林業の分野にも、この流れは無関係ではない。衛星で広い山林の状態を捉え、ドローンで必要な場所だけ作業する発想は、そのまま使える。
苗木の植栽後の施肥や、薬剤散布、獣害対策などは、場所ごとの状態を見て判断すべき作業である。農業で磨かれた衛星とドローンの連携が成熟すれば、数年遅れで林業にも流れ込むと見ている。
ビジネスへの影響
導入判断は面積と肥料費の二つで決める
最初に確認したいのは、自社や取引先の経営面積と、年間の肥料費である。肥料費の一割が削減できたとして、その額が機材やサービスの利用料を上回るかを試算する。
目安として、数十ヘクタール以上でまとまった圃場があれば、検討する価値は高い。小規模であれば、自前で機材を買うより、散布を請け負う業者や地域の共同利用を探すほうが現実的である。
小さく試して、効果を数字で残す
いきなり全面導入はおすすめしない。一部の圃場で従来のやり方と比べ、肥料の使用量と収量を記録するのが近道である。
結果が出れば、取引先や補助金の説明にも使える。記録を残す作業は手間だが、後から効いてくる。
異業種にとっての商機
ドローンの販売や整備、データ解析を手がける企業には、請負と保守の需要が広がる。衛星データと機体をつなぐ設定を代行するだけでも、現場では助かる。林業や造園など隣の分野へ横展開する際は、農業での実績が最良の営業材料になる。